このご時世、「解雇」とは少し違いますが、退職代行を含め、広い意味で会社を去ることがクローズアップされることが増えてきました。
解雇も、本人の意思とは異なり会社を辞めざるを得ないケースの一つです。今回は、その正当性やルールについて学び、考えるきっかけになればと思います。
【労働基準法第19条】解雇してはいけないときがある?
こんにちは!今回は、労働基準法第19条で定められている「解雇制限」について、社労士試験対策も兼ねてアウトプットしていきます!
■ 労働基準法第19条とは?解雇してはいけない時期がある!
第19条(解雇制限)
使用者は、労働者が業務上の負傷または疾病により休業する期間及びその後30日間、解雇してはならない。
また、産前産後休業中およびその後30日間も同様に、解雇は禁止されています。
これは、労働者の健康と生活を守るための重要な規定です。
■ ポイント①|業務上のケガ・病気 → 休業中+30日は解雇NG!
労働者が仕事中にケガをして休業している場合、その休業中および復帰後30日間は、原則として解雇できません。
労働者が仕事でケガや病気になったとき、その回復を待たずに解雇されれば、生活が立ち行かなくなります。
一定期間の解雇制限によって、安心して療養・回復に専念できるよう保護されています。
■ ポイント②|産前産後休業中+30日も解雇NG!
産前6週間、産後8週間の休業期間と、その後30日間も解雇は禁止です。
これは母性保護のために設けられており、違反すれば解雇は無効となります。
■ ポイント③|絶対NGではなく「例外あり」
一切の解雇が禁止されているわけではありません。次のような場合には例外的に認められることがあります。
- 重大な服務規律違反や著しい業務妨害など
- 労働基準監督署長の認定がある場合
このように、客観的にやむを得ない理由がある場合のみ、行政の認定を得て解雇が可能です。
■ ポイント④|「業務外」のケガや病気には適用されない!
私生活でケガや病気になった場合には、19条の解雇制限は適用されません。
- 業務上のケガ・病気 → 解雇制限あり(第19条適用)
- 業務外のケガ・病気 → 解雇制限なし(ただし社会通念上の判断はあり得る)
■ 試験対策ポイント|ひっかけに注意!
- 「産前産後休業の期間中のみ、解雇できない」→ ❌(+30日も含む)
- 「業務外のケガでも19条の解雇制限がある」→ ❌
- 「本人が希望すれば解雇できる」→ ❌(同意があっても原則無効)
■ 実務の現場ではどう扱う?
現場では、業務上傷病による休業が長期化した際に、安易に解雇を検討する例もあります。
しかし、第19条に抵触すると違法となり、重大なトラブルになるリスクも。
- 産前産後休業・労災休業中は「復帰後30日間」まで解雇を避ける
- やむを得ない場合は労基署の認定を取得する
■ まとめ|弱い立場を守るのが労基法第19条
労基法第19条は、病気や出産などで働けない労働者を守るための大切なルールです。
社労士試験でも頻出ですし、実務でもしっかり理解しておく必要があります。
■ 過去問にチャレンジ!
Q1:使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後の30日間は、労働基準法第81条の規定によって打切補償を支払う場合、又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となりその事由について行政官庁の認定を受けた場合を除き、労働者を解雇してはならない。
A1:○(労基法第19条)
打切補償を支払った場合の他に、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合で所轄労働基準監督署長の認定を受けたときも解雇制限の規定の適用が除外される。
Q2:一定の期間を契約期間とする労働契約により雇い入れられた労働者が、契約期間の途中で業務上負傷し、療養のため休業する場合には、使用者は、少なくとも当該休業期間中及びその後30日間は、当該労働契約を終了させることのないよう当該労働契約の契約期間を更新し、又は延長しなければならない。
A2:×
労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間に労働契約が
終了する場合、単に労働契約期間の満了に該当し、「解雇制限期間中の解雇」には当たらない。従って、契約期間の更新、延長は不要である。
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