労働契約の効力と契約期間に関して①

今回から複数回に分けて、労働契約の効力と契約期間に関して記載が出来ればと思います。

🔹第1回:そもそも労働契約とは何か?基本のキから学びましょう

労働契約ってどんなもの?

労働契約とは、労働者が使用者に対して労務を提供し、使用者がその対価として賃金を支払う約束のことです。要するに、「働くよ」「お金払うよ」という約束です。

この労働契約は、口約束でも有効です。ただし、トラブルを避けるために書面化(労働条件通知書など)が法律で義務づけられている部分もあります(労基法第15条)。

労働契約の根拠法

  • 労働契約法(個別の契約内容のルール)

  • 労働基準法(最低限守るべき基準)

  • 民法(契約一般に関するルール)

この3つの法律が組み合わさって、労働契約のルールが成り立っています。とくに労働基準法は絶対的強行法規といって、「これより悪くしてはならない」という大原則があるため、違反すると契約自体が無効になってしまう場合もあります。


【労基法第13条】法律違反の労働契約はどうなる?

この条文は短いながら、試験でも実務でも非常に重要なルールが含まれています。
「そもそも法律に反した契約って有効なの?」「もし違反していたらどうなるの?」という疑問を解決していきましょう。


■ 労働基準法第13条とは?

まずは条文を見てみましょう。

第13条(労働条件の決定)
この法律及びこれに基づく命令に違反する労働契約の部分は、その部分については無効とする
この場合において、その無効となった部分は、この法律及びこれに基づく命令で定める基準による

つまり、

  • 労働基準法のルールを下回るような契約を結んでも、その部分は無効!
  • 無効になった部分は、法律で定められた最低基準に置き換わる!

という仕組みになっているのです。


■ 労働契約の自由とその限界

民法では「契約自由の原則」が基本です。
つまり、当事者が合意すれば自由に契約内容を決められる…というのが通常の考え方。

しかし労働契約においては事情が違います。

なぜなら、労働者は「弱い立場」にあるから

企業と労働者では、どうしても交渉力に差があります。
「この条件で働いてくれないと雇えない」と言われたら、たとえ条件が悪くても飲んでしまう人が多いですよね。

そんな不利な契約から労働者を守るために、「最低限守るべきライン」が定められているのです。
それが労働基準法であり、第13条はその最低ラインを下回る契約を排除するためのストッパーなのです。


■ 具体例で見る!労基法違反の契約とその無効

ここからは、実際にありがちな違反例を紹介しながら、どのように13条が働くのかを見ていきましょう。

❌ 例1:最低賃金以下の契約

例えば東京都の最低賃金が1,163円のところ、「時給950円」で契約したケース。

➡ この場合、時給950円という契約は無効
実際には「最低賃金で契約した」とみなされ、1,163円で支払う義務が発生します。

❌ 例2:残業代を払わない契約

「月給制で、残業代込みで支給します。残業代は出ません。」という契約。

➡ 労基法第37条では、残業には割増賃金を支払うことが義務です。
この条文に反する契約は、残業代を払わない部分が無効となり、法律に従った計算による割増賃金の支払いが必要です。

❌ 例3:有給休暇を与えない契約

「当社では有給休暇はありません」と就業規則や契約書に書いてある場合。

➡ 労基法第39条により、有給休暇は労働者の権利として与えることが義務です。
そのため、「与えない」契約は無効。法定の有休は自動的に与えられます。


■ 無効になった後はどうなる?

ここで大事なのが、「無効になったからと言って契約全体がなくなるわけではない」という点です。

🔽 ポイントは「部分無効・補充適用」

労基法13条では、

  • 違反している契約部分は「無効」
  • その部分には「法定基準が自動的に適用」される

という形で補完されるのです。

これにより、労働者の権利を保護しつつ、契約自体は継続されるというバランスのとれた仕組みになっています。


まとめ

労働契約は自由に結べるものですが、その自由には**「法の枠」があります**。
労働基準法第13条は、その枠からはみ出た契約を無効にして、労働者の保護を図るための大切な規定です。


過去問
Q1:労働基準法は、同法の定める基準に達しない労働条件を定める労働契約について、その部分を無効とするだけでなく、無効となった部分を同法所定の基準で補充することも定めている。

A1:○   労基法13条
設問のとおり。労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分について
は無効とする。この場合において、無効となった部分は、労働基準法で定める基準による。

Q2:労働協約に定める基準に違反する労働契約の部分を無効とする労働組合法第16条とは異なり、労働基準法第13条は、労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とすると定めている。

A2:○   労基法13条
設問のとおり。なお、残りの部分は有効な労働契約として存在する。

今回はここまで。また明日以降も頑張ります

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