前借金相殺の禁止に関して

時間が空いてしまいましたが、引き続き社労士勉強をしていきながらアウトプットしていきたいと思います。

前借金相殺の禁止とは?

労働基準法では、労働者の賃金の自由を確保するために、さまざまな規制が設けられています。その中の一つに「前借金相殺の禁止」があります。これは、使用者が労働者に貸し付けたお金を、後の賃金支払い時に自動的に相殺することを原則として認めないというルールです。

この制度は、特に生活が苦しい労働者が賃金を前借りし、その後の賃金から差し引かれることで、常に借金を抱えた状態になってしまうことを防ぐために設けられています。


1. 前借金相殺の禁止とは?

労働基準法第17条では、賃金の前借りや貸し付けに対して、その返済を賃金と相殺することを制限しています。この条文の趣旨は、労働者が借金を理由に賃金の支払いを受けられなくなることを防ぐためです。

具体的には、

  • 使用者が労働者にお金を貸し付けた場合でも、労働者の同意なしに賃金から天引きすることはできない。
  • 労働者が前借りをしていても、賃金支払い時に強制的に相殺することは違法となる場合がある。

この規定により、労働者の経済的自由が確保され、生活の安定が図られています。


2. 前借金相殺の禁止の例外

すべての場合において賃金と前借金の相殺が禁止されるわけではありません。以下のケースでは、一定の要件を満たすことで相殺が認められることがあります。

(1)労働者の自由な意思による同意がある場合

労働者が事前に書面などで明確に同意している場合には、賃金との相殺が可能となります。ただし、この同意が強制的に求められた場合は無効となります。

(2)労働協約による場合

労働組合との協定によって、前借金の相殺が可能とされる場合もあります。これは、労働者の代表である組合を通じた合意があるため、一定の正当性が認められるためです。

(3)法的義務による控除

例えば、所得税や社会保険料の天引きのように、法律によって義務付けられている控除については、労働者の同意がなくても賃金から差し引くことが可能です。


3. 前借金相殺の禁止に違反した場合のリスク

前借金相殺の禁止に違反すると、労働基準監督署の指導や、最悪の場合は罰則を受ける可能性があります。

  • 行政指導:労働基準監督署が是正勧告を行い、従わない場合は更なる措置がとられる。
  • 刑事罰:労働基準法違反として、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性がある。
  • 民事責任:労働者から不当な控除として損害賠償を請求される場合がある。

このように、前借金相殺の禁止を守らないと、企業にとっても大きなリスクを伴います。


4. 企業が気を付けるべきポイント

企業が前借金相殺に関して適切な対応を取るためには、以下の点に注意することが重要です。

  • 前借金の取り扱いを明確にする:社内規程において、前借金に関するルールを明記し、労働者に周知する。
  • 同意書を適切に取得する:相殺を行う場合は、労働者の自由意思に基づく書面同意を取得する。
  • 労働基準法を遵守する:相殺に関する法律を正しく理解し、違反しないように注意する。
  • 社労士など専門家に相談する:前借金制度を導入する際や、賃金の控除を行う際は、社労士に相談することで適法性を確保できる。

まとめ

「前借金相殺の禁止」は、労働者の生活を守るための重要なルールです。企業側が適切なルールを設けずに賃金を勝手に差し引くと、法的なリスクが生じる可能性があります。

以上、「前借金相殺の禁止」についてでした。労働基準法の理解を深め、適正な労務管理を行いましょう。

過去問
Q1 労働者が、実質的にみて使用者の強制はなく、真意から相殺の意思表示をした場合でも、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。

Q2 労働基準法第17条は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金とを相殺することを禁止し、金銭貸借関係と労働関係とを完全に分離することにより金銭貸借に基づく身分的拘束の発生を防止することを目的としたものである。

A1:×   労基法17条
労基法17条における前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金との相殺禁止は、相殺
のうち、使用者の側で行う場合のみを禁止している。労働者が自己の意思によって相殺することは禁
止されていない。

A2:○   労基法17条
設問のとおり。労働者の足留策や強制労働の原因となる前借金その他労働することを条件とする前貸
の債権に限り、賃金との相殺を禁止したものである。

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