今日は公民権行使の保障に関して記載が出来ればと思います。
1. 公民権行使の保障とは?
「公民権行使の保障」とは、労働者が選挙や裁判員などの公民としての権利を行使することを理由に、不利益な扱いを受けないようにする規定です。
これは、日本国憲法で定められた国民の権利を保障するために、労働基準法で具体的に規定されています。
2. 法的根拠(労働基準法第7条)
労働基準法第7条(公民権行使の保障)
使用者は、労働者が労働時間中に選挙権その他の公民権を行使し、または公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合において、拒んではならない。
また、この行為を理由として解雇その他の不利益な取り扱いをしてはならないとされています。
3. 対象となる「公民権行使」とは?
(1) 公民権の行使
- 選挙権・被選挙権の行使
- 国政選挙(衆議院・参議院)
- 地方選挙(都道府県知事、市町村長、議会議員)
- 国民投票(憲法改正時)
- 住民投票
(2) 公の職務の執行
- 裁判員や陪審員としての職務
- 選挙管理委員会の役員、開票立会人
- 地方自治法に基づく行政委員(例:教育委員会の委員)
- 国勢調査などの調査員
- 消防団の活動(公務としての出動時)
4. 企業側の義務
労働基準法第7条に基づき、企業(使用者)は以下の義務を負います。
(1) 必要な時間の請求があった場合、拒否できない
- 労働者が「公民権行使」や「公の職務の執行」に必要な時間の請求をした場合、企業は原則としてこれを認めなければならない。
(2) 解雇・不利益取り扱いの禁止
- 労働者が選挙や裁判員などのために時間を請求したことを理由に、解雇や減給、降格などの不利益を与えてはならない。
具体例(違法となるケース)
- 「選挙に行くなら、休日に行け」として拒否する
- 「裁判員に選ばれたなら、仕事を辞めてもらう」
- 「投票日当日に休むなら、ボーナスを減額する」
違法ではないケース
- 企業側が「業務に支障が出ないように調整を求める」のは可能(ただし、合理的な範囲内)。
5. 労働者の義務と注意点
公民権行使のために労働時間中に時間を取得する場合、労働者にも一定の義務があります。
-
(1) 必要最小限の時間で請求する
- 「必要な時間」とは、公民権行使や公の職務に要する時間のみ。
- 例えば、選挙の投票に1時間かかるなら「1時間のみ請求」するのが適切。
- これを超えて、私的な目的で休むことは認められない。
-
(2) 企業の業務運営に配慮する
- 企業も運営上の都合があるため、急に休むのではなく、事前に相談するのが望ましい。
6. 賃金の取扱い
労働基準法では、「公民権行使のための時間について賃金を支払う義務はない」と明記されていません。しかし、一般的に以下の対応が考えられます。
-
(1) 有給か無給か
- 企業が独自の就業規則で「公民権行使の時間は有給」としている場合 → 有給
- 就業規則で規定がない場合 → 無給となるケースが多い
-
(2) 代替措置の可能性
- 「別の日に労働時間を増やす」「時間単位の有給休暇を利用する」など、代替措置をとることも考えられる。
7. 罰則・違反時の対応
企業が労働基準法第7条に違反した場合、以下の措置がとられる可能性があります。
-
(1) 労働基準監督署の是正指導
- 労働者が労働基準監督署に申告すれば、企業に対し指導が行われる。
-
(2) 民事訴訟
- 労働者が解雇・不利益処分を受けた場合、裁判で訴えることができる。
-
(3) 刑事罰(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)
- 労働基準法第119条により、違反した場合は刑事罰の対象となる。
8. 具体的な事例・裁判例
(1) 裁判員制度と労働基準法第7条
裁判員制度の導入以降、裁判員に選ばれた労働者に対する企業の対応が問題となるケースが増えている。
- 事例:「裁判員に選ばれた社員に対し、上司が『仕事を休むなら給与は払えない』と発言した」→ 労働基準法違反の可能性
- 企業側の適切な対応:「裁判員としての職務を全うできるよう調整し、休業補償などを考慮する」
9. まとめ
- 労働基準法第7条は、労働者の公民権行使を保障する重要な規定。
- 企業は労働者の選挙・裁判員などのための時間請求を拒否できない。
- この請求を理由とする解雇・降格・減給などの不利益処分は禁止。
- 企業に賃金支払い義務はないが、就業規則による対応が可能。
- 違反した場合、労働基準監督署の指導や罰則が適用される可能性あり。
実際の過去問
Q1:労働者が労働審判手続の労働審判員としての職務を行うことは、労働基準法第7条の「公の職務」には該当しないため、使用者は、労働審判員に任命された労働者が労働時間中にその職務を行うために必要な時間を請求した場合、これを拒むことができる。
Q2:公職の就任を使用者の承認にかからしめ、その承認を得ずして公職に就任した者を懲戒解雇に付する旨の就業規則条項は、公民権行使の保障を定めた労働基準法第7条の趣旨に反し、無効のものと解すべきであるとするのが最高裁判所の判例である。
Q3:使用者が、選挙権の行使を労働時間外に実施すべき旨を就業規則に定めており、これに基づいて、労働者が就業時間中に選挙権の行使を請求することを拒否した場合には、労働基準法第7条違反に当たらない。
A1:× 労基法7条 昭和63年基発150号 平成17年基発0930006号
公の職務には「労働審判員」(労働審判法)、裁判員が加えられている。したがって、労働審判員に任命された労働者が労働時間中にその職務を行うために必要な時間を請求した場合、これを拒むことはできない。
A2:○ 労基法7条 最判昭和38年6月21日(十和田観光電鉄事件)
設問のとおり。公職への就任について使用者の承認にかからしめることは労働者の公民権行使の自由
を制限するものであり、判例においても、就業規則の条項は無効としている。
A3:× 労基法7条 昭和23年基発1575号
権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻、又は日を変更することは問題な
い。しかし、公民権の行使を労働時間外に実施すべき旨を就業規則等に定めたことにより、労働者が
就業時間中に選挙権の行使を請求することを拒否することは違法である。
次回は近代的な拘束部分を記載出来ればと思います。
コメント